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同窓会での再開・・・ 特集【いつまでも男と女】

声 

 あの人だれ?の声が聞こえた。同窓会会場。ドアが開いて現れたのは、彼だ。「おやおや、太ったね」。私も思わず苦笑いした。30年前の面影もない「かっこ悪い中年男」がそこにいた。
 大学1年生、私たちはどこにでもいる学生カップルだった。ジーパンにTシャツがお決まりのファッション。ロックやフォークのコンサートに行った。親に内緒で2人で旅行もした。
 3年後、私は企業に就職しOLに。彼は就職浪人という名の大学5年生になった。右肩上がりの経済成長期、同期の男性はバリバリと仕事をしていた。彼といえば、相変わらず。流行のイタメシやディスコに通う私は徐々に彼から離れていった。
 あなたとは会わないと切り出した時、彼ポカンとしていた。別れた夜電話で「結婚しよう」と言ってくれた。私が聞いた彼の最後の声だった。
「隣すわっていい?」
382.jpg その瞬間私の人生のページが一気に30年分戻ってしまうのを頭のてっぺんからつま先まで感じた。「いいよ」。私はそう答えるのがやっとだった。その声も口調も少しも変わっていない。外見のギャップはふっとんだ。この声の主は私の愛していた人。この声の中で私は幸せな時間を過ごしていたのだ。 
 でも私は平静を装い、お互いに当たり障りのない世間話をして、その場を別れた。
 1週間後、名簿を片手に私は受話器をとった。あれ以来忘れられなかった。後悔か、懐かしさか。でも確かな気持ちが湧き上がっていた。名前を呼んで欲しかった。「ねえ、純子」と。・・・声が聞きたい・・・ダイヤルを回した。