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メールで知った「饒舌」な夫 特集【いつまでも男と女】

メール慕情 夫の帰宅
 今日、1ヵ月ぶりに夫が帰ってくる。彼が富士山で暮らすようになってもうすぐ2年。母の介護でこの地を離れられない私を残しての単身赴任。
 ピローン♪ スーパーのレジに並んでいた私の電話にメールが届いた。たぶん、夫からだ。結婚して25年になるが、離れて暮らすようなって初めて「饒舌」な夫を知った。<おはよう。今朝は快晴。そちらの天気は?><今帰り。ちょっと深酒しました。反省。>毎日届くメールに最初のうちは「あの寡黙な人が!」と驚いたが、今では慣れてしまった。けれども時々、妙に面映いメールが混じっているので注意が必要だ。
 <家事って大変なことだったんだな。ありがとう。><今日、花見だった。夜桜がきれいだったよ。来年こそはお前と見たい。> お見合い結婚だったせいか、はたまた本人の性格のせいか、これまで夫からそんな言葉をもらったことはなかった。遠く富士から届く不意打ちの名文(?)の数々に、涙目になるやら、噴き出すやら。外出先で読むにはちょっとした心の準備が要るのだ。
383.jpg レジを済ませてメールを読んでみた。<いま電車に乗った。お土産に鱒寿司を買ったので夕飯は準備不要。あ、でも手鞠麩の入った澄まし汁が食べたい。>
 夫が帰ってくる週末は、母の介護の当番は姉だ。早く家に帰ってお洒落しよう。この前買ったスカートがいいかも。足取りに合わせて弾む買い物袋の中で、手鞠麩がカサリ、と音をたてた。
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