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池田理代子さんインタビュー 特集【学ぼう・習おう】

劇画家・声楽家 池田理代子さん
学んで開いた、2つ目の人生


 劇画家としての地位を築いた後、47歳で東京音楽大学声学科への入学を果たした池田理代子さん。漫画と音楽、2つの世界で活躍中だ。真撃に学ぶことで心の示す道を真っ直ぐに進んできた、池田さんにお話を伺った。

池田理代子さん プロフィール
1947年大阪生まれの60歳。劇画家、声楽家。今なお多くの読者を魅了する『ベルサイユのばら』を1972~73年に連載。1980年には『オルフェウスの窓』で第9回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した。1995年、東京音楽大学声楽科に入学。現在は声楽家として舞台に立つ一方、四コマ漫画『ベルばらkids』やペ・ヨンジュン主演の韓国ドラマ『太王四神記』を元にした同名漫画を連載中。
池田さんの公式サイト:http://www.ikeda-riyoko-pro.com/

やり残した夢を叶えたい~40歳の決意

 大学在学中に連載した『ベルサイユのばら』で劇画家としての地位を確立した池田さん。30代には『オルフェウスの窓』で日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。以降も読者に愛される作品を描き続けている。
 そんな池田さんが音大への進学を意識し始めたのは、「人生の残り時間が少なくなってきた」と感じた40歳の時。5年間悩み、45歳で声楽科受験を決意した。成功を収めた道からの転身に抵抗はなかったのだろうか。そのことを問うと、意志を秘めた静かな声でこんな答えが返ってきた。「成功は人生の目的ではないです。お金や成功に拘っていたら何もできません。ただやり残した夢を叶えたかったのです」。

誕生!47歳の音大生

 決意から2年間、池田さんは受験準備に励んだ。「音楽理論やドイツ語、歌やピアノを勉強しました。聴音なんかは中学以来でしたね」。そして47歳の春、見事合格。「社会人枠はなかったので、一般の受験生にまじっての受験でした」。

ハードな大学生時代を経て、舞台へ--

 音大での日々は想像していたよりもハードだったそう。濃密な4年間を過ごし、卒業。以降、声楽家として舞台に立つ。オペラ『愛の妙薬』の主演や、ミュージカルへの出演、日本フィルハーモニー交響楽団の「第九」でのソロソプラノなど、現在に至るまで着々とキャリアを積む。

60を目前に演技を学ぶ


 一昨年の冬には演技の勉強のため明治座アカデミーに入所した。週1回、1年半のレッスンを終え、今春修了。ここでは基礎から演じることを学んだ。「舞台の上でどう動いたらいいのかが身につき、自信が持てるようになりました」と成果を語る。

現在、稽古の真っ最中

 現在、8月公開のオペレッタ「こうもり」の稽古が大詰めだ。池田さんの役はヒロイン、ロザリンデ。日本語でのオペレッタ公演は初めてだそうで「いい勉強になります」。恋人役は30歳以上年下の田代万里生さん。「彼のファンとベルばらファンは重なっているらしく、楽しみにしてくださっているお客さんが多いようです」と微笑む。

今だからこそできる役をやってみたい

 池田さんんに今後取り組みたい仕事を聞いてみた。「『ばらの騎士』の元帥夫人のような、今だからこそやれる役をしてみたいです」。若い女性に心惹かれる恋人を見て、年を重ねた自分を受容していく大人の女性の役なのだそう。また劇画家としては「平家物語を描いてみたい」。いずれも実現する日が楽しみだ。

お勧めはボランティア

 池田さんのような華麗な自己実現じゃ難しくても、『何か』始めたい場合、どうすればいいのか。池田さんのアドバイスはこうだ。「やりたいことが見つからないなら、ボランティアがいいですよ。人から喜びを頂けます」。
 実はボランティアは池田さんが力を入れているものの1つ。里親としてアフリカやモンゴルなどに住む4人の子供たちを支援するほか、チャリティ・コンサートも行っている。近々では8月30日にサントリーホールで開かれる『真夏に第九を歌う会』でソロを務める。このコンサートは北朝鮮拉致被害者家族の会の支援などを目的としている。

 始終冷静に、そして思慮深く言葉を返して下さった池田さん。受け答えの端々からのぞいたのは、華やかな経歴を支える、意志の力と努力の存在だ。この非凡な女性は本当に誠実に生きることと向き合っているのだ、と心震える心地がした。

(取材・構成:西村信子)