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山口君の「熟年のつぶやき」『フォーエバー』

 学生の頃、白いギターに憧れた。テレビの番組で奇人変人コーナーがあり、その商品が白いギターだった。しかし、残念ながら当時の私は(今はどうか定かではないが)、奇人でも変人でもなかった。
 仕方なく、同級生から使い古しの白いギターを5000円で買った。カメラの前でオナラに火をつけることよりも、ゲテモノを食べることよりも、ナケナシのお金で決着させたのだ。
 だからといって当時、とり立てて音楽少年だったわけではない。高校受験の頃に深夜放送のラジオを聴き、そこから流れてきた曲を知っておくことが、次の日の級友とのコミュニケーションで重要なアイテムの1つになっていただけだ。
 そういえば、眠い目をこすりながら受験勉強していた頃に、オフコースの「眠れぬ夜」が羨ましく、恋する人に嫉妬した。恋をしていれば眠くならないのか?それなら、恋をして徹夜で勉強した方がはかどるんじゃないか・・・。
 こんな私でも当時はまだ、恋をしたらより一層勉強が手につかなくなる事を知らなかった・・・ホントです。
 吉田拓郎が「僕の髪が肩まで伸びて・・・」と唄った時には、五厘刈りの野球少年だったし、ギターのチューニングを自分でしたら、音がバラバラになり、仕舞には弦が切れてもう少しで目に突き刺さりそうになったこともある。
 とうとうギターは、Am、C、D7、Fぐらいしかコードを押さえられなかった。そのため、当時ギターで弾くことが出来たのは、確か・・・「ケメコの唄」と「赤い風船」位だったと記憶している。だから音楽は、弾くことよりも聴くことの方へとシフトチェンジしていったのは無理もない。
 そんな程度の音楽性しか持ち合わせていなかった私でも、常に程よい距離感のところに歌があった。
 新聞配達をして初めて買ったステレオが、ソニーのリッスン1000。私が自分の稼いだお金で初めて買った大きな買い物だ。
 このステレオは、大学1年の冬、芸人になるために埼玉からプチ家出する時、友達に頼んでこっそり車で東京まで運んだくらい愛着があった。
 四畳半一間の安アパートに電気コタツとステレオのある生活が、私の芸人人生のスタート風景だった。その時、一緒に持ってきたのが「かぐや姫フォーエバー」の2枚組みLPだった。思い通りにいかない日々の中で、部屋に帰り「かぐや姫フォーエバー」を聴く。隣近所に迷惑にならないようにヘッドホーンを付けて聴く。涙を流しながら聴く。
 しかし、一緒になって唄っていたもんだから、その声の大きさに近所から苦情が来てしまったこともあるくらい熱中して聴いた・・・そして唄った。
 だからだろうか、今でもカラオケで歌える曲は、かぐや姫のフォーエバーの中にあった歌ばかりだ・・・。お笑いをやるようになってからはとみに、そんな歌が持つ力に嫉妬している私だ。

コント山口君 本名:山口弘和
生年月日:1956年11月23日
出身地:埼玉県
サイズ:162cm68kg
コント作家、タレント。「コント山口君と竹田君」でお笑いスター誕生(NTV)にて初出場優勝のデビュー。ゴールデンアロー賞新人賞(S59)・日本放送演芸大賞最優秀ホープ賞(S59)・花王名人大賞(S60、S61)等を受賞する。最近は、舞台の演出や講演にも力を入れる。
公式ブログ:山口君のオヤジっ記 http://blog.livedoor.jp/yamaguchikunblog/