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山口君の「熟年のつぶやき」『夏は山派?海派?それとも・・・』

 以前、夏休みを利用して本栖湖にオートキャンプに行ったことがある。都会の人混みから逃れて、富士山の麓の大自然の中で、涼をとろうとしたのだが・・・凄かった。
 キャンプ場は人・人・人・車・車・車。都会の人混みを避けて、田舎の人混みに入り込んでしまったのだ。
 車を止めてテントを張る場所を探すのにひと苦労する姿は、都会で駐車場を求めて彷徨う姿と変わりない。
 やっとの思いでテントを張り一息入れて見渡す景色は、まるで野戦病院のようだった。連泊している人たちは洗濯物を干している。テントとテントが隣あい、テントを張るロープが交錯しあう。そのロープに、必ず誰かが足を引っ掛けて「ギャッ」と大きな声をあげ、テントを揺らす。
 山に涼を求めてきたはずなのに・・・自然の中で開放感を味わいたかったはずなのに・・・。到着した時から目論みは大きくはずれ、萎えた気持ちはさらに大きく傷を広げる。
 夜になるとさすがに涼しさは、都会とは格段に違う。
「これだよ!これが自然の中でのキャンプの良さだよ」。
そう思った時だ・・・隣のテントからの話し声が実に良く聞こえる。聞く気はないのに耳に入ってくる。どこかで音楽が流されている。無邪気な笑い声が響く。
 まるで防音設備のない都会生活だ。あきらめた・・・山で涼をとるのは・・・。
 翌年の夏は、海に行くことにした。西伊豆の海辺にあるキャンプ場。この時期の人と車が多いのは、全年の本栖湖で織り込み済み。しかし、違ったのは・・・海だ。海に入れば都会の海水浴場と違い空いている。しかも昼間は海水浴をして、そのままテントにもぐりこめる。
 いい!都会では絶対に味わえない自堕落感を満喫できる。シュノーケリングをして背中だけ日焼けして、見事に捕獲したタコを焼いて食べる。
 山の自然では気になった人の声は、波の音がかき消してくれる。海だ。夏は海に限る。夜には、その波の音が子守唄代わりになってくれる・・・はずだった。
 しかし、海の自然だって、そんなに人間の生理に合わせてくれるはずがない。昼間、人々の喧騒を包み隠してくれた波の音が、静まり返った夜になると・・・ウルサイ。気になる・・・気にしないようにすればするほど気になってくる。
時々不規則に打ち寄せる波の音が余計に睡眠を遠く押し流していく。
 それからは・・・夏の旅行は、めっきり旅館かホテルになった。場所は海でも山でもいい・・・。
 防音設備の整った落ち着いた雰囲気を堪能しながら、都会でも味わえるエアコンの風で涼をとる。何かが違うと思いながらも、そんな旅行にホッとしてしまう自分がいる。

コント山口君 本名:山口弘和
生年月日:1956年11月23日
出身地:埼玉県
サイズ:162cm68kg
コント作家、 タレント。「コント山口君と竹田君」でお笑いスター誕生(NTV)にて初出場優勝のデビュー。ゴールデンアロー賞新人賞(S59)・日本放送演芸大賞最優 秀ホープ賞(S59)・花王名人大賞(S60、S61)等を受賞する。最近は、舞台の演出や講演にも力を入れる。
公式ブログ:山口君のオヤジっ記 http://blog.livedoor.jp/yamaguchikunblog/
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