読み物 - 連載モノ - スペシャルインタビュー - 長門裕之さんインタビュー

長門裕之さんインタビュー

俳優として夫として「夢」が支える人生
俳優人生70年、妻である南田洋子さんの認知症を告白し、今年自身の介護生活を著した本も話題に。
11月に公開する映画「黄金花」に出演している。

 
~黄金花は老人ホームで暮らす人々の話。植物学者(原田芳雄)を中心に老人たちの現実の姿と、過去のイメージの世界を交差しながらそれぞれの夢をおっている。長門さんはじめ、原田芳雄さん、松坂慶子さんなど個性あるベテラン俳優が名を連ねている。木村威夫監督は昨年90歳でデビューした異色の監督。初作「夢のまにまに」は長門さん主演~
 
黄金花」は熟年世代が共感できる映画

-この作品はとても不思議な魅力の映画ですね。

老人たちが繰り広げる日常生活が面白おかしく描かれる一方、奇妙な世界へ引きずり込まれるよね。歳とると楽しかった時、幸せだった時の記憶だけが膨らんでいくんだね。そのイメージの中に観客が自分と折り重なる部分があると思うんだ。例えば青春時代の夢や初恋・挫折・失望などそんなところも共感してもらえる映画だと思うよ。
 
-ベテラン俳優さんが連なっていますね。
個性派ばかりの役者を監督はうまく使いこなしているよね。主演の原田君は信念をもって演じる人、尊敬する役者のひとりだね。介護士である松坂さんは画面に明るさを出している。三條美紀さんは相変わらず色っぽい。

-長門さんは老人ホームの所長さんですね。
そう、出番は少なかったけどね。所長としてはあんなすごい老人ばかりの施設はないなと思ったよ。アドリブを入れながら演じたら監督に褒められた。いくつになっても嬉しいね。

-70年の俳優人生を振り返ってどう思われますか。
70年続けてました、と言ったって誰も褒めてくれないよ。俳優という商売は自分を必要とする人がいないと成り立たない。次の仕事に繋げるために今の仕事をする。ある意味滑稽だと感じるけど、誰かかが路線を引いてくれたからここまで来たんだね。それには感謝しているよ。

-順調な仕事ぶりとお見受けしていましたが。
洋子と「おしどり夫婦」として売れていた時期もあったけどほんとの俺は浮気性だった。その上事業に失敗したり、それを洋子が尻拭いしてくれた。60歳くらいの時、「お金ない」といわれてはっとした。それから人生が変わったね。俳優として転換期だったような気がする。仕事に貧欲になったね。

自分を支えているのは洋子。今、1番愛している。

-その洋子さんの介護生活を送っていらっしゃいます。

洋子は毎朝「どこ行くの?」と聞く。いってらっしゃいと微笑むけど泣いているの。初めてこの女のそばを離れたくないと思ったね。今1番愛している。だから仕事からもまっすぐ帰るよ。

-長門さんご自身のお体は大丈夫ですか。
俺は洋子に元気にしてもらっている。洋子との暮らしの中で、「笑い」が癒しに繋がると感じたね。だから彼女が笑ってくれる瞬間が幸せ。人生の残り時間、楽しかったことだけ残したい、だから僕は妻にたいしても滑稽を演じているんだ。

-これからも同じように続けていくのですか。
洋子は自分の不安感を取り除くために言葉にならない言葉で、歌にならない歌を歌う。1日中歌っていることもある。疲れない?と思うがそれが彼女の生きる証なの。そんなことが分かるのも一緒にいるから。これからも女房と僕と認知症と3人で仲良く暮らしていくのさ。

-黄金花に「だれもが夢をみたいんです」とありますが、長門さんの夢は。
夢とはズバリ「洋子の医療費を稼ぐ」だ。俺が死んだ後も洋子が幸せに暮らせるように金を残したいからね。
現実的だけどそれが夢。
今までは当たり前のように仕事がきたが、これからはそうはいかないだろう。けど意欲はたっぷりあるよ。だから75歳になった今も老化現象と戦って仕事を続けていくよ。

(聞き手 小泉 裕子)

※この取材は10月15日に行ったものです。南田洋子さんのご逝去の報に接し謹んでお悔みを申し上げます。

長門裕之 1934年生まれ
●主演映画「太陽の季節」・「にあんちゃん」・「ハチ公物語」・「寝ずの番」など多数
●近作「旭川動物園物語」・「夢のまにまに」
●著書「待ってくれ、洋子」

映画「黄金花-秘すれば花、死すれば蝶-」
□11月21日よりシネマート新宿・銀座シネパトス同時公開、他全国順次ロードショー
□原案・脚本・監督:木村威夫
□主演:原田芳雄、松坂慶子、川津祐介、松原智恵子、麿赤兒、長門裕之、ほか
□撮影:小川信司
□プロデューサ&音楽:川端潤
□配給:太秦[2009年/日本/35mm/79min/color]