スペシャルインタビュー - 雪村 いづみさん

スペシャルインタビュー 雪村 いづみさん

 ポピュラーソングは勿論、ジャズ・シャンソン・カントリーなど幅広いジャンルの曲を歌いこなし、艶やかで伸びのある歌声を披露し続けている雪村いづみさん。アーティストの海外進出の先駆けで、日本でワンマンショースタイルをいち早く取り入れたパイオニアだ。デビュー最短でスターにのし上がったことから「世紀に一人のシンデレラ」と呼ばれた彼女の華麗な人生をお届けするインタビューだ。
  ひばりさん、チエミさんの存在があったからこそ
               今の自分がここにあります。

Profile 雪村 いづみ(ゆきむら いづみ) 1937年 東京都目黒区生まれ

 1953年、16歳で「想い出のワルツ」でビクターからレコードデビュー。以来、「青いカナリヤ」「オウ・マイ・パパ」などのヒット曲を連発。「NHK紅白歌合戦」には通算10回の出場をはたす。故、美空ひばりさんや江利チエミさんとともに「三人娘」として多数の映画に出演し人気絶頂を迎える。66年から70年はアメリカを活動の拠点とし、テレビ出演や全米公演などのアメリカツアーで活躍。日本のポピュラーミュージック、ショービジネスを長きにわたりリードしてきた存在として1998年に紫綬褒章を受章。


――メイドになり損ねたその日に歌手になる
父親がハワイアンバンドに参加する熱心な音楽家で、戦時下においてもモダンな音楽が日常的な環境で育った雪村いづみさん。
 「中学を卒業してすぐに、メイドを募集している母の知人のお宅に面接に行ったのですが『あまりにも小柄でか細くて可哀想で使えません』と断られてしまいました。ガックリしながらとぼとぼ歩いて、やっとの思いで辿り着いたのが新橋のダンスホール。そこの知り合いのマネージャーさんとお話をしているうちに、突然、『歌を歌ってお金が貰えるかもしれない!』とひらめいたのです。英語で歌える唯一の曲『ビコーズ・オブ・ユー』をステージで歌わせてほしい! とお願いしたところ、ぶっつけ本番で歌う事になりました。一生懸命歌っている私の姿が目に止まったのか、みんなダンスをやめて私の廻りで拍手喝采。翌日からダンスホールのステージ上で歌うのが私の仕事になったのです。メイドになり損ねた日に、私は歌手になった訳なんですよ。運命と言うか…、とてもラッキーでした」

――「三人娘」で人気絶頂
「16歳でレコードデビューした曲が大ヒットし、歌手としてはトントン拍子でした。18歳の頃には、ひばりさん・チエミさんと一緒に、『ジャンケン娘』『ロマンス娘』など、多くの映画に出演し『三人娘』なんて呼ばれましたね。まだ駆け出しの私が、偉大な先輩達の仲間に入れたことは、人生最大の幸運です。当時からひばりさんのオーラは物凄く、最初は近くによるだけでカーッとなりとても緊張したものです。ひばりさんは、楽屋の中ではいつもゲラゲラ笑っているようなとても笑い上戸な方。だから『おじょう』と呼ばれたのよ。『サザエさん』の出演で気さくなイメージのチエミさんの方がむしろ神経質で細かかったわね。三人三様の個性の私達は、同い年という事もあり、無二の親友になっていきました。お二人の存在があったからこそ今の私があると、いつも心から感謝しています」
――ドルを稼いだ初めての日本人歌手
 今でこそアーティストの海外進出は珍しくないが、彼女はアメリカで成功した初めての日本人歌手だ。1960年から1年間に及ぶ全米公演に出演し、世界を相手にしたエンターティナーの道を歩む事になる。「ドルを稼げる日本人シンガー」として称賛を浴び、かの有名な雑誌「LIFE」の表紙も飾った。
「渡米先での最初のコンサートは、ニューヨークの劇場でした。以来、アメリカでは数えきれないコンサートツアーを行いました。もう、忘れてしまうほど。お陰様でラスベガスに家を持つことができ、ここにはひばりさんやチエミさんは勿論、沢山のお友達が遊びに来てくれましたね。アメリカでのレッスンやコンサート経験が、現在の私のステージスタイルの基礎を作ってくれました」
――多くの人に希望と感動を贈る奇跡の歌声
 早く逝ってしまった2人の分まで…、という気持ちで現在もステージで歌い続けている。ひばりさん・チエミさんが若い頃に録音していた「トゥー・ヤング」の音源と一緒に歌ったCDが、去年『日本レコード大賞』の企画賞を受賞した。また、今年80歳を記念し、65年前にデビューした時のレコード会社「ビクター」と音楽プロデューサーである合田道人さん協力のもと、「CD大全集・雪村いづみのすべて」が発表された。
 「ヒット全曲集・映画音楽主題歌・スタンダードジャズの他、今回新たに収録した歌声も含め、全百十一曲が詰まっている彼女の集大成のアルバムです。人生の大切なシーンで聴いた青春の思い出の曲ばかりを集めました。自分の軌跡をこのアルバムとともに感じてほしい」と、このアルバムの選曲を務めた合田氏が心を込めてコメントした。

 とても傘寿をむかえたとは思えないほど愛らしい口調のチャーミングな雪村いづみさん。今なお現役のシンガーとして輝いていられるのは、『三人娘』のおかげだと何度も何度も自分に言い聞かせているように語る姿が印象的だった。

 2017年6月
 (聞き手:高橋牧子 編集長:山本英二)


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