シリーズ 健康長寿への道5

すべての疲労は脳が原因?シニアのための疲労予防・克服法

去る7月15日、脳疲労研究の第一人者で、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身医学博士によるセミナー(長谷工シニアホールディングス 主催)が所沢パークホテルにて開催されました。今回は、その内容を抜粋してお届けします。

疲労とは脳の中の「自律神経」の疲れ

そもそも人はどうして疲れるかご存知でしょうか?「『乳酸』がたまるから」と答える方も多いと思います。私も学生の時そう習いましたが、それは事実ではありません。
例えば今日のような暑い日、歩くだけで汗が吹き出し疲れますよね。それは、体温をコントロールする必要があるから。体温調整する部分は、脳の中にある「自律神経」で、体温を下げろと頑張っているのです。「自律神経」は、体を一定の状態に保つために呼吸、心拍、体温を秒以下の単位で細かく調整しています。実は我々が疲れていると感じるのは、自律神経の疲れで、筋肉や内臓の疲れではありません。「脳の中にある自律神経が、体が疲れたとあえて誤解させて、これ以上体を動かさないようにさせている」これが脳の中に起こっている疲労感というものです。だから疲れを感じたら体だけをケアするのではなくて、脳の中をケアしなければなりません。皆さんは更年期の症状の「自律神経失調症」をご存知だと思います。これは、徹夜明けの疲れ切った状態と同じなのです。

60歳を過ぎると自律神経の働きは1/4以下に衰える

ここにいらしている皆さんの平均年齢は60歳を過ぎていると思われますが、悲しい事実をお伝えしなければなりません。60歳を過ぎると、自律神経の働きは20歳代のピーク時の1/4に衰えてしまいます。筋肉とか内臓の低下はせいぜい6割程度に下がるだけで、ここまで老化することはありません。自律神経の老化がいちばん激しいのです。逆に考えると、自律神経の働きを保てば老化が防げるとも言えます。運動するより、自律神経を若がえらせたほうがアンチエイジングに繋がるという事です。
健康のためにと、走ったりスポーツクラブに行って運動をし過ぎの方が多いと感じます。それは、命を削っている行為といっても過言ではありません。例えば早朝に散歩したり、運動をしたりする方は危険と思ってください。疲労と老化はメカニズムが一緒で、神経細胞が活性酸素によって錆びていくのです。一過性なのが疲労で、疲労が回復する前に蓄積していくと老化に繋がります。例えば皮膚で考えてみましょう。日焼けすると赤くなり炎症が起きますが、それが1、2日なら治るでしょう。しかし、長年日光を浴び続けるとシミ、シワになります。疲労も同様に貯めないようにすることが大切なのです。

自律神経を若く保つための4原則

では、脳の自律神経を保つには、どのようにすればよいのでしょうか。以下の4原則を心掛けましょう。
「寝つきだけは良い」という方、それは「寝落ち」しているだけで睡眠が足りていないか質が悪いのかもしれません。夜中にトイレに何度も起きるという方、目が覚めたからトイレに行っているだけかもしれません。それは眠りが浅い証拠で、泌尿器科に行く前にまず睡眠のチェックをしましょう。
また、鶏むね肉には疲労対策効果が証明されている、イミダペプチドが含まれています。これは渡り鳥がなぜ疲れずに飛ぶことができるかの研究からわかったことです。羽の付け根にはイミダペプチドが豊富にあったことから、最強の抗疲労成分であると明らかにされました。鳥の胸肉を1日100㌘を目安に摂るとよいでしょう。イミダペプチドは、サプリメントやドリンクも販売されています。
自律神経は夜しか休めません。そのため、睡眠の環境を整えておくことが大事になります。「朝起きた時に汗をかいているのは、自律神経が休めていないためNG」です。快適な温度・湿度になるようにエアコンをつけるようにましょう。

脳の自律神経を若く保つ4原則

1.質の良い睡眠
2.ほどほどな運動
3.自律神経を
疲れさせない食生活
4.安心・安全、快適な環境