シリーズ 健康長寿への道10

閉経期以降、より元気で快適に過ごすために…

気をつけたい女性特有の病気とその症状

 女性の平均寿命が87歳の現代、更年期以降の閉経後の人生は35年以上にも及びます。女性は、思春期・成熟期・更年期・老年期とライフサイクルの節目にはホルモンが関与し、その影響がとても重大です。女性ホルモンが激減する更年期以降に注意すべき症状や病気について、入間市の産婦人科 小室医院院長 小室順義先生にお話を伺いました。

閉経期以降に要注意の女性特有のがん
 閉経期やそれ以降の方々に特に注意が必要な疾患は、子宮内膜にできる子宮体がんです。若い世代に多いウイルス感染によっておこる子宮頸がんとは異なり、ホルモンの異常が主な要因ですが、食生活の欧米化、肥満、糖尿病などの生活習慣病が、その発生に大きくかかわっています。
 また、卵巣がんにも注意が必要です。卵巣がんは、40歳代から増加し、50~60歳代にピークを迎えます。妊娠・出産の回数が少ない、言いかえると排卵の回数が多い方、初潮が早く閉経が遅い方などに発症のリスクが高まる傾向にありますが、5%~10%の割合で、遺伝要因も関与するといわれます。
 良性疾患で卵巣にみられる子宮内膜症性のう胞(チョコレートのう胞)は、閉経期前後にがん化する恐れもあるので、気をつけなければいけません。さらに外陰がんは、とくにご高齢の方に多いようです。白斑症といって色素が抜けるような症状がみられ、外陰部の痛みやかゆみを伴う場合はこの病気が疑われます。
 それから、30歳代からよくみられる子宮筋腫は良性腫瘍ですが、閉経後も大きくなってくる場合は、肉腫などに変化している可能性もありますので注意が必要です。

女性ホルモンの低下や加齢による様々な症状
 ホルモンが低下してくると腟粘膜が萎縮し、萎縮性腟炎(老人性腟炎)がおこりやすくなります。また、外陰炎などの炎症もこの世代の方には多くみられ、かゆみなどの症状を伴います。
 ほかにも、子宮が下がってくる骨盤内の臓器脱もよくみうけられる疾患です。骨盤底筋が緩むと骨盤内の子宮や膀胱・直腸が下垂や脱をおこします。膀胱が下がると頻尿や尿もれなど、排尿のトラブルが出ることが多くなります。軽症の方には、骨盤底筋を鍛える体操をお勧めします。それ以外では、リングペッサリーを腟内に入れて下垂を抑える方法が取られますが、症状の重い方には手術で対応します。
 また、通常の生活に影響がなくても、閉経後の萎縮性腟炎のためにおりものや不正出血で悩まれる方もいらっしゃいます。ホルモンの低下が関わる症状は人それぞれですので、一人で悩まず、専門家に相談するのが良いでしょう。

女性が快適に老年期を過ごすために
 更年期障害をいかに軽くし、更年期から老年期へとスムーズに健やかに過ごしていけるかはとても大切です。閉経後の数十年は、女性ホルモンが低下した状態で過ごすことになるわけですから、このための不具合は多岐にわたる可能性があります。心身の不調ばかりでなく、肥満や高血圧、動脈硬化、骨粗しょう症に至るまで様々な症状も関わってきます。美しく歳を重ね、毎日をはつらつと過ごすために、定期的なチェックをし、体に変化が出ていないかを確認することは大事でしょう。
 ご高齢の方は、婦人科に通うことに抵抗をお感じになるかもしれませんが、健診や検査方法、さらには治療も進歩しています。不安や苦痛を伴わないような配慮と対応がなされますので、安心して婦人科を受診するよう心がけて下さい。