金井克子さん

「♪パッパッパヤッパ~」と聴いて、交通整理のような振付けの「他人の関係」を思い出す熟年世代の方は多いだろう。バレエで 磨かれた柔らかくキレのあるダンス、ハスキーで情感たっぷりに聴かせる歌声、バイタリティ溢れ元祖クールビューティとして活 躍し、70代にして今なお輝き続ける金井克子さんにお話を伺いました。
ひらき直ったら絶対にダメ!
体を動かし、オシャレを楽しみましょう
Profile
金井克子(かないかつこ)1945年6月17日生まれ。大阪府出身
1953年に西野バレエ団に参加、その後モデルとして芸能界入り。1964年からNHK「歌のグランド・ショー」に、 出演、由美かおるらと共に西野バレエ団5人娘として人気を博す。1966年からNHK紅白歌合戦で、歌やダン」 スを披露するなど4年連続出場。1973年、振付けで話題を呼んだ「他人の関係」がオリコンシングルチャート」 TOP10にランクインし、同年の日本レコード大賞企画賞を受賞し、再び紅白歌合戦出場を果たす。
――バレリーナを夢見た少女が レコードデビュー
戦後、日本人の生活にも豊かさ を取り戻しつつあった1950年 代、彼女は5人姉妹の末っ子として 大阪で育った。 「ある日、芸術好きだった一番上の お姉さんに連れられバレエ公演を 観に出かけたんです。フランス人形 の様な衣装をまといスポットライト を浴びて踊っている少女達の姿に 釘付けになって…。それがきっかけ で、8歳で西野バレエ団に入団しま した」
西野バレエ団に通っていた中学1 年の頃、昭和5年の皇太子様と美 智子様のご成婚記念のバレエ特番 で、まだ駆け出しの彼女がいきな り主役に抜擢された。その時の特 「番を観ていた他局のプロデューサー から、歌番組への出演依頼がかかっ た。始めは踊るだけの出演だったも のの、本人の思いに反して歌う事に …。後にその歌番組を観ていた又 別のプロデューサーから、彼女の意 とは裏腹に芸術際参加番組のお 芝居の主役のお声がかかり、女優へ の道も開けていく。また、NKH 「歌のグランド・ショー」のレギュラー を4年間務め、レコードデビューに 迄至ったのだ。本来バレリーナを目 指していた彼女だったが、様々な分 野での才能を見いだされ、注目を 集める事になったのだった。
――フィンガーアクションの 先駆者
「レコードは数えきれないほど出 しましたが、歌には全く興味がな かったので当時の事は覚えていない のです。歌って踊って…というスタイ ルで出した曲もありますが、歌よ り踊りの方が目立っていました。ダ ンサーとしての飛躍の為、ニューヨー クに渡った時期もありますが、ど うしても日本での「金井克子」とい う名前を捨てられなかったですね。 再度レコーディングの話が持ち上が り、もう歌は最後と思っていた時に 出会った曲が「他人の関係」です。 エロチックな何とも言えないなまめ かしい歌詞を、あえてクールに無表 情で歌ったのが逆に時代にマッチし ました。ミュージカル「スィート・チャ リティー」での男性ダンサーの踊り をモチーフにした指さし確認の様 な振付も、インパクト抜群でブーム になりましたね。後の、夏木マリさ んや辺見マリさん、麻丘めぐみさん などの振り付けは、皆このフンガー アクションから始まったんですよ」
この曲は、1993年「パッパーパ ヤッパー、パールライス」とアレンジ され、お米のCMで再びお茶の間で お馴染みとなった。最近では、ドラ マ「昼顔」の主題歌として一青窈さ んがカバーし、話題を呼び脚光を 浴びた。いつの時代も色褪せない昭 和の代表曲の一つだ。
――難病を乗り越えて
元気溌刺の彼女だが、実は30年 程前にレイノー病という難病を患 っている。手足の末梢の血液が不足 して、放置すると組織が壊死して しまう恐ろしい病気だ。治療、手術 を余儀なくされ、2カ月ほど入院。 幸いにして手術後の発症は無く現 在に至っている。8歳年上のご主人 や友人の支え、そして何よりも本 人の努力があってこそ乗り越えら れたのだと想像ができる。 「歳を重ねた10代の今、なお幅広 い年代の方に支持され、コンサート では特に女性ファンが目立つと言 う。もって生まれた華やかさに加え て、美へのあくなき追求とそれを 支える努力。これが女性の心を引 き付けるのだろう。
――歌って踊る美と健康の秘訣
「最近は舞台を中心に活動をし ていますが、練習にかなり時間がか かります。歌と踊りを覚え、その後 にダンサーと合わせる…、一時間の 舞台を作るのに一カ月以上もかか りますね。年齢と共に同じ事をこ なそうとしても、練習に要する時 間も増えてきます。ライブ前の練 習となると、まず、一時間のストレッ チをしてから5時間程度のお稽古、 その後クールダウンに一時間費やし ます。公演は一日2回やる事も多 く、体力もかなり使いますね。日々 の身体には気使ってますが、まずやっぱり基本は寝る事。そして上手に 食べて体を温める事。後はひたすら トレーニングですね。若い頃と違って すぐに筋肉が落ちますので、絶え ず体を動かすようにしています。 故障しないように柔軟性を保ってい くのが大切です。食事は、炭水化物 は少な目に、タンパク質を多目に摂 っています。プロティンは毎日欠かさ ず飲んでいますよ!
歳を重ねることは中古の自動車 と同じ。時々エンジンをかけておか ないと、いざという時エンジンがかか りません。そうならないよう準備 をしておかないといけませんね」
宝塚歌劇団以外で「歌って踊る」 というスタイルを初めて築いてきた 彼女。当時の新聞記者から「二兎 を追う者は一兎をも得ず」と、かな り叩かれたそう。新しい時代を作 り上げてきた彼女の挑戦は、今も 続いている。

2019年8月
(聞き手:高橋牧子 編集長:山本英二)

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