住まいと健康 健康寿命を伸ばす 住まいとは?

皆さん、健康には留意していると思いますが、どのような事に気をつけていすか? 日々の食生活や、規則正しい生活、適度な運動など挙げる方が多いと思います。もうひとつ大きな要因となっているのが外部環境。とりわけ、住まいの温度環境は健康に大きく関わっています。また、転倒などの家庭内の事故も、事前に対策することで防止できることがたくさんあります。家族全員の健康改善、病気や事故の予防を「住まい」という視点から考えてみましょう。

室温と健康とは相関関係あり室温は16度以上を目安に

冬、寒いのでお風呂に入りたくない、夏暑いので2階に上がりたくない、夜トイレに行くのが寒くて布団から出るのが億劫だ、などと思った事がないでしょうか? これは、健康に影響をおよぼす住宅の環境を、あなた自身が嫌がっていることにほかなりません。
日本人の3大死因は、ガン・脳卒中・心疾患ですが、特に心疾患は冬場に増加する事が分かっています。最も多い月は1月ですが、それは最も少ない9月の約2・4倍というデータもあります。また、イギリスの住宅の健康・安全性評価システム(HHSRS)によると、例えば室温が16℃以下では高齢者に関しては呼吸器疾患や心血管疾患などの大きな健康リスクがあるとしています。
また、年齢別に室温と血圧の関係を調べたところ、高齢者ほど室温低下によって血圧上昇を起しやすいというデータもあります。さらに寒いと皮膚や肺の温度も低下するため、皮膚や呼吸器系の免疫力が低下し、結果、皮膚アレルギーや気管支喘息などの呼吸器系疾患に悩まされる人も少なくありません。つまり、高齢になるほど、室温の低下には気をつけないといけないと言うことです。

 

室内の温度差によるヒートショックに注意

ヒートショックとは急激な温度変化により身体が受ける影響のことです。暖かい部屋からまだ冷たい浴室、トイレなど、温度差の大きいところへ移動すると、血圧が急変するため、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす事です。高血圧や動脈硬化の傾向がある人がその影響を受けやすく、なかでも高齢者は注意が必要とされています。
このようなヒートショック特に冬期は住宅内の温度差が大きくなるため、注意が必要です。特に日本の入浴中の急死者数は諸外国に比べて高いとされ、その理由は浴室と脱衣室の温度差であると考えられてます。実に日本で年間累計1万人以上がヒートショックが原因で死亡していて、室内における高齢者の死因の4分の1を占めるともされています。

結露はカビの原因になりカビは健康面でのリスクを高める

外気温が大幅に下がる冬は、一年中でもっとも結露が発生しやすい時期。結露を放っておくと建物自体を傷める原因となるばかりか、人間の健康にも害があります。結露とは、空気が冷たいものに触れて急に温度が下がると、それまで空気に含まれていた水蒸気が水となってその表面に現れる事です。結露するとカビが生えやすくなり、カビはさまざまな病気の原因になり健康面で住んでいる人に害をおよぼします。
例えば、ぜん息の主要な原因物質のひとつがこのカビだと言われていて、そしてもうひとつの主要な原因物質であるダニは、このカビをエサとしています。そのため、カビが増えればそれをエサとするダニも増えるという悪循環が起きる事になります。
またカビは、「夏型過敏性肺炎」や、「気管支肺アスペルギルス症」といった深刻な病の原因ともなります。結露対策は健康面からもますます重要になってきています。

高断熱・高気密住宅なら暖かくヒートショックや結露を防げる

では、暖かくて室内の温度差が少なく、結露が少ない家にするにはどうしたらよいのでしょうか? それは、高断熱・高気密住宅に改修するか住み替える事につきます。
国土交通省による「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査」によると、断熱改修した住まいに住むと、血圧の低下ばかりではなく、夜間頻尿の改善、悪玉コレステロール値の改善、心電図異常の所見の減少、糖尿病の改善などがみられています。これは、直接的な病気の原因を減少させたわけではありませんが、断熱改修によって、暖房器具の前にいる時間が短くなったことにより、住宅内での身体活動(いわゆる運動)が増加したのも一因だといわれています。今回の調査では断熱改修後に、1日平均の住宅内活動時間が、男女とも、65歳以上で約35分増加したという結果が出ています。
それに加えて、高断熱・高気密住宅は省エネで、光熱費が安いというメリットもあります。まさに、良いことずくめです。

 

事故のリスクが少ない安心の住まいとは?

高齢者は住宅内での事故が多く8割近く発生しています。長年過ごしてきた、住み慣れた我が家かもしれませんが、さまざまな危険が潜んでいます。
家の中での事故の場所別に見ると、1位が居室、2位が階段となっています。平面的な場所である居室での事故が一 番多いのは不思議かもしれませんが、滞在時間長いのが理由です。敷物でつまずいたり、床やフローリングですべったなどで転倒する場合が多く、危険があるはずもないという油断と、小さな段差などでも転倒してしまう足腰の筋力低下、身体機能・認知機能の衰えにその原因があります。「階段」での事故は深刻な事態を招きます。転落事故で、毎年多くの高齢者が大ケガを負っています。
これらの事故を防ぐためにも、段差の解消や手すりの設置など、事故が起きる前に事前に対策をとりたいものです。

補助金・減税を活用してお得にリフォームしよう

以上、高断熱・高気密住宅は、健康への大きな助けになるという事がご理解いただけたと思います。現在、政府では断熱リフォームに対して補助金の支給を行っています。「一般社団法人 環境共創イニシアチブ」が実施する制度で、最大120万円の補助額が交付されます。高性能建材(ガラス・窓・断熱材)を用いたリフォームだけでなく、家庭用蓄電システムや蓄熱設備の導入も補助の対象です。
さらに、国が行う断熱リフォームでは、「次世代省エネ建材支援事業」という補助金制度があります。この事業では、補助対象経費の1/2以内で1戸あたり200万円を上限に支給されます。
また住宅のリフォーム工事に対しては、減税措置が受けられます。自治体によってもバリアフリー工事等に対して、固定資産税等の減税を行っているところもあります。
補助金や減税制度をきちんと理解しているリフォーム会社と、じっくり話し合ってみることをおすすめします。