大阪が誇る演歌の嬢王、中村美律子さん。遅咲きのデビューながら、浪曲で鍛えた歌唱力と表現力で『河内おとこ節』が大ヒット、今や演歌界には欠かせない存在だ。軽快なトークと親しみやすさでお茶の間の人気者の彼女は、今年デビュー40周年を迎える。記念曲『人生万歳』のリリースにあたり、意気込みを語っていただいた。
いつまでも皆様にエールを送り続けられる
歌手でありたい!
櫓の上で河内音頭を歌う少女時代道
銭湯のボイラーマンの父親は、仕事をしながらいつもラジオで歌を聴いていたという。そのそばで彼女は、流れてくる曲をすぐさま覚え、風呂場で覚えたての歌を歌った。銭湯だけにエコーが良く効き、上手に聞こえるのがとっても気持ちよく、歌う事が大好きになったのだと語る。
「小学2年生の時、地域ののど自慢大会に出場し優勝をしました。その時にアコーディオン伴奏をした先生が、歌謡教室に通う事を勧めて下さり、歌を習い始めるようになったのです。当時から近所の人に、『みっちゃん(中村美律子さん)、何でもいいさかい十八番を聞かして!』とせがまれると、ミカン箱の上で、ひばりさんや島倉さんの歌を得意になって歌いました。お菓子やお小遣い、玉子も貰ったりして…、親が喜んでいましたね。人前で歌って喜んで貰うのが嬉しくて、中学生の頃から、夏まつりで『河内音頭』も歌っていました。学校を卒業してからは、いつの間にか地元で歌の仕事をしていて、ローカル歌手という立場になっていましたね」
遅咲きのメジャーデビュー
地元河内で地道に歌手活動をこなしている彼女は、東京進出への思いはなかったという。ただ、歌を長く歌い続けたいという願いから、紫綬褒章を受章した春野百合子師匠に弟子入りし、浪曲の勉強を始めるのだった。
「浪曲は本当に難しいです。一人で何役も演じ物語を作ります。その上、節があるのですから並大抵ではないですね。私がようやく浪曲師としてやっていけるかと思っていた頃、ある音楽事務所で新しく出来上がった曲を歌う女性を探している、という方を紹介して頂きました。その時に都はるみさんの『大阪しぐれ』を歌ったのが事務所の目に留り、遅咲きながらメジャーデビューが決まったのです。
事務所では私のために、TV大阪で『演歌一夜』という歌番組まで作ってくれました。ゲストは誰もいなく、私一人で歌う30分枠の短い歌番組なのですが、ジワジワと視聴率が高くなり、知名度も徐々に上がっていきました。ワンクールだけの予定だったこの番組が、何年も続く事になったのです」
『河内おとこ節』の大ヒットで紅白常連歌手へ
デビュー3曲目の『河内おとこ節』は、『NHKのど自慢』の予選会で全国で歌われるようになり、NHKに『中村美律子』の存在を知ってもらうきっかけとなった。
「『河内おとこ節』をいただいた時、作詞の石本美由起先生が、私の事をよく知っていて私のために書いて下さった曲なのだ…と分かりました。この曲で初めて紅白歌合戦に出場した時は、全国の皆様に私の名刺を配った気分でしたね。紅白に15回出場のうち、8回はこの歌を歌っていますよ。今も河内に住んでいますし、河内音頭を歌っていた時代からの積み上げで、今があると思っています。思い入れの深い曲ですね」
紅白出場が叶った翌年、皆様に感謝の気持ちを伝えるため自分に何ができるかと考えていた頃、『壺坂情話』という曲をいただきました。目の不自由な夫を支える妻の心情を歌っているこの曲がきっかけとなり、視覚障害者の方々のお役に立てれば…、と思い『盲導犬育成支援活動』の手伝いを始めました。感謝の気持ちを伝えたくて始めた活動ですが、今では自分の励みの一つとなっています」
デビュー40周年記念曲『人生万歳』
デビュー40周年の年を飾るのにふさわしい記念曲『人生万歳』が、5月に発表される。この作品は、人生の歩みと感謝を明るく力強く描いた人生の応援歌だ。アップテンポで景気の良い曲調に乗せ、喜びや悔しさを重ねた道のりを表現しているという。親や支えてくれる人への感謝の気持ちを織り込んで、聞く人すべてを元気づける祝祭感に満ちた作品となっている。
「作詞の久仁京介先生が、『40年間も歌ってきたんだな…、でも、まだまだ頑張って歌ってほしい』という前向きな思いで書いて下さったのだと思います。私自身の事を言っているな、と感じる部分もありますし、それは私世代の皆様も同じように感じて下さり、応援歌になるのではないでしょうか。『♪うしろ向いても道はない』という歌詞の中に、これから前向きで頑張ればいい、というエールになるメッセージが込められていています。
私自身も、40年間も歌わせて頂けた事に感謝をしつつ、元気で皆様にエールを送り続けられる歌手でありたいと思っています」
くしくも40周年記念曲のタイトルは、『熟年ばんざい』ならぬ『人生万歳』。彼女の関西弁が心地よく耳に残り、言葉の節々から「歌を通して幸せを分かち合いたい…」、そんな強い思いが伝わってきました。
(聞き手 高橋牧子 撮影 岡田充)
Profile 中村 美律子(なかむら みつこ)1950年7月31日生まれ 大阪府東大阪市出身
地元大阪を中心に、河内音頭や浪曲をベースにした歌唱で評判を集める。1986年『恋の肥後つばき』でメジャーデビュー。89年『河内おとこ節』が大ブレイクし、同曲で92年NHK紅白歌合戦に初出場を果たす。第50回日本レコード大賞最優秀歌唱賞を受賞。紅白歌合戦に15回の出場し、実力派演歌歌手として人気を博す。
今年デビュー40周年を迎え記念曲『人生万歳』をリリースし、精力的に活動中。
