香西かおりさん

民謡歌手としてのキャリアを持ちながらも、演歌界に華麗な転身を遂げた香西かおりさん。演歌歌手としての実力と艶やかさを兼ね備え、多くのファンの心を掴みお茶の間でもお馴染みだ。演歌のイメージとは一味違った幅広い交友関係で、枠にとらわれない活動を繰り広げている彼女が自然体で語ってくれた。

 

気負わないで無理なく負荷無く!!
ナチュラルが一番

民謡界の若手エース

小学生の頃、初めて本格的に出会った歌は、「民謡」だった。近所のおばあさんが民謡教室に行く時、付き添いで偶然一緒に出掛けたのがきっかけとなり民謡を習う事になる。まだ幼い少女は、全然世界観の違う民謡に大した興味を抱いた訳ではなかった。ただ、負けず嫌いの性格が功を成し、「上手く歌えないことが悔しい…」の繰り返しで、課題を毎週熟していくうちにみるみる開花していった。数々の民謡のコンクールで入賞し、全国大会で最優秀賞を受賞したのがきっかけとなり17歳で民謡歌手としてレコードデビューする事となる。
彼女はもともと銀行に就職するという堅実な目標があり、実際に銀行に就職していた経歴を持つ。丁度この時期にNHKから民謡ブームが巻き起こり、民謡歌手としてテレビでの露出が多くなっていったのだ。民謡界の若手で期待を背負っていた彼女は、2足の草鞋を履くわけにはいかずに銀行を止める決心し、本格的に歌の道で生きていく事となったのだ。

演歌界への華麗な転身

「民謡ブームが落ち着いた頃、音楽業界では若手の演歌歌手を育てていこうという時代の流れになっていました。そんな中、ある音楽関係者の方から『演歌のレッスンを受けてみないか』と、お誘いの言葉を頂き上京を決意したのです。民謡って情景を歌う事が多いのですが、ジャンルが違う演歌は表現にオリジナリティもあり、『挑戦してみたい』という思いでのスタートでしたね」
2年のレッスンを経た88年、演歌歌手としての最初の曲「雨酒場」は、年末のレコード大賞の新人賞を受賞しロングランヒットとなった。3枚目のシングル「流恋草(はぐれそう)」では紅白歌合戦に初出場するなど、時代の波も味方し着実に演歌界で飛躍していった。
「デビュー当時はあまりの忙しさで自分がどんどん痩せていくのも気付かない程でした。スケジュールをこなすための体調管理をするのに必死で、周りの人との接点はほとんど摂ることが出来ない状態が続きました。でも、有線放送で自分の歌が流れているのを聴き、曲が売れているのだと実感できたのは、とても嬉しい事でした。紅白歌合戦の初出場の時は、自分が勝ち取ったこの場所で歌える喜びが大きく、とても心地良かったですね。不思議と緊張はしませんでした」
93年、日本レコード大賞を受賞した「無言坂」は、玉置浩二さんが彼女の為に作曲を手掛けている。
「玉置さんとの御縁は、TVドラマのプロデューサーで、私の初リサイタルからのステージ演出を手掛けて頂いている方がきっかけです。玉置さんから頂いたこの素敵な作品は、私にとってターニングポイントにもなった曲で、大切な歌の一つとなりました」

歌い継がれる曲を形に残したい

原点である民謡から演歌、そしてポップスやジャズまで様々なジャンルの曲を歌いこなす彼女だが、デビュー30周年も越えた今、様々な活躍の場を広げている。
「今コロナ渦の中、リサイタルで人を集めることが出来なく、もどかしい思いをしています。その分、最近はYouTubeチャンネルで、過去の映像を自分なりに解説したり、エピソードをお伝えしています。アコースティックですが民謡も歌ったりします。後は、リハビリテーションセンターさんとリモートで繋がって、皆で歌を楽しむというような、ステージとは一味違う香西かおりをお届けしています。ステージに立てないのは淋しくもありますが、これから先もジャンルにとらわれない素敵な曲、後になっても歌い継がれていくような歌を記録として形に残していけたら嬉しいですね」

ストレスを溜めず、
自分へのご褒美を忘れずに!

「最近はプライベートな時間が少し持てるようになりましたので、休みの日には友達と映画や食事に出掛けたり…、お酒もコミュニケーションツールの一つになっています。やはりこの年代からはストレスを溜め込む事は避けて、無理なく負荷無く、上手くストレス解消をしていく事、自然体で生きていくのが理想です。ここ3年半位前から健康のために体幹トレーニングを始めました。インナーマッスルを鍛えることで代謝も上がりますし、良い気分転換になっています。毎日を元気で明るく『ピンピンころり』を目指します!(笑)」

着物姿の艶やかさとインタビュー時のラフなスタイル、様々な顔を私達に見せてくれる。歌だけに留まらず、芝居やエンターテイメントの世界で、自分がどこまで挑戦できるか楽しみだと語る彼女に、今後も目が離せない。

聞き手 高橋牧子
編集長 山本英二

 

Profile 香西かおり(こうざいかおり)
1963年8月28日生まれ 大阪府出身。11歳で民謡教室に通い始めたのを機に、民謡コンクールにて数々の賞を受賞。17歳で民謡歌手デビュー。後、演歌歌手として再デビュー、88年「雨酒場」でレコード大賞新人賞を受賞。91年「流恋草」が大ヒットで同年のNHK紅白歌合戦に初出場したのをかわきりに、通算19回出場。93年「無言坂」で日本レコード大賞を受賞するなど、日本を代表する実力派演歌歌手。原点である民謡からポップスまで幅広いジャンルを歌いこなし、演歌界のみならず様々な場で活動を展開中。