スペシャルインタビュー サーカス

CMソングでもお馴染み、洗練されたハーモニーでコーラスグループの先駆者として70年代後半を席巻したサーカス。お洒落さとポップさを兼ね備えた彼らの音楽は、近年のシティポップブームに乗り、世代を超えて新たな輝きを放っている。グループ結成当時からのメンバーに加え、新生サーカスの一員に加わったメンバー全員が揃い、アットホームな雰囲気の中でそれぞれの思いを語った。

わがままになるって、ある意味正直さのあらわれ
この歳になったら、わがままさえも大切と思える

母親と共に家族でコーラス

幼い頃から歌の大好きな母親の影響を受け、ジャズからシャンソン、ロシア民謡やイタリア民謡まで、世界中の音楽を耳にして育った三姉弟。楽しげに歌う母の姿を見て自然に歌が好きになり、日常でもパートに分かれてハーモニーを楽しむ様になった。
正子「幼い頃から洋楽のカバー曲を聴き、ザ・ピーナツや中尾ミエさんの歌を口ずさんでいました。アメリカンポップスが大好きで、小学6年の時に出会ったビートルズに夢中になり、ファンクラブにも入った程です」
高「当時はレコードではなく、ビニールの様なペラペラのソノシートで、イタリア民謡や五十嵐喜芳さんを聴いていました。中学生の頃からは洋楽に親しみ、アンディ・ウイリアムスが好きでしたね。姉弟で音楽の好みは違っていましたが、常に音楽に溢れていた家庭なのです。それがサーカスの原点かもしれませんね」

ファミリーデビューをする予定でなかった!?

サーカスといえば、姉弟と従妹という独特のメンバー構成で、仲の良いファミリーをイメージするが、実は急造のグループなのだ。
正子「当初私は男性バンドに誘われ、既に3人でデビューに向けた活動を始めていました。ところが男女2名ずつのコーラスグループでデビューさせるのがレコード会社の意向で、急遽女性メンバーを探すことになったのです。音楽仲間の庄野真代ちゃんに声を掛けましたが、彼女は既にソロデビューが決まっていて…。思い立ってオーストラリアにいる従妹に声をかけたところ、何ともあっさり加入が決まったのです。その後、音楽性の違いで男性陣が相次いで脱退して…。既にレコーディングの時期も曲も決まっていたので、その場しのぎの間に合わせで弟2人に頼み込んだ訳です。これが身内グループの始まりですが、弟達と大人の恋愛の歌詞を歌うのには反発がありましたね(笑)」
「僕達は一曲でも歌える番組があれば、どんなメディアにも出演しました。『8時だョ!全員集合』のマット運動や少年少女合唱団の様なコントにも、率先して出ましたよ。僕はまだ大学を卒業したばかりで、在学中は演劇で講演活動もしていた経験もあり、歌以外のステージは逆に楽しんでいましたね」
結成後の2曲目「Mr・サマータイム」は、カネボウのCMソングに起用され、瞬く間に大ヒット。お洒落な大人の歌を歌うニューミュージック系のグループとして注目を浴び、数多くの名曲を残した。

受け継がれていくハーモニー

メンバーチェンジを繰り返しながら、着実にその世界観を作り上げてきたサーカス。2名の独立を機に、2013年から加入したのが、叶ありさ、吉村勇一の若い2人だ。
ありさ「突然父から電話で、『サーカスの新メンバーの候補に名前が挙がっているよ』と連絡を受け、頭が真っ白になりました。アパレル業界を退職し、歌の勉強を始めて2年目、まだソロ活動を始めたばかりでした。でも、この先の伸びシロも含めてみて貰えるのであれば頑張りたい! と伝えました。『サーカス』は不動のものとして父の姿を観て育った私が、まさか一員になるとは思ってもみませんでした。が、今は、4人でハーモニーを奏でる事で色んなメッセージを伝えていきたい、ハーモニーで繋がる『和』を育てていきたい、そんな気持ちで一杯です」
勇一「僕にとって『サーカス』のオーディションを受ける事は、ある意味挑戦でした。叶家同様、小さい頃から家族と共に歌に親しみ、マンハッタンスリムという名でソロ活動は続けていたものの、ハーモニーの経験は殆どなかったのです。ですが今は、4人で声を合わせながら経験を重ねていく中で、『サーカス』の一員になるってこういう事なのか…と、気付きの連続です。今後は、様々な世代の人の心に響くハーモニーや親子世代で繋がる歌を届ける、異業種同士でのコラボレーションの場など様々な場所で『サーカス』を通してチャレンジしていきたい事が沢山あります」
高・正子「アンサンブルですから心が一諸になった瞬間、声もピタッと溶け込む様な一瞬があるのです。その心地よさ、それを追い求めて40年以上歌ってきました。きっと聴いている方もそうなのだと思います。今後も4人でそういう瞬間をいっぱい作って、親子世代で勢いのあるステージを繰り広げていきたいですね」

わがままにも意味がある

「ある程度歳を重ねていくと、自分を抑える人が多いと思いますが、わがままな人って自分に嘘が無い気がしています。わがままに生きる事は、ある意味自分に正直に生きる事。良い意味でわがままを通すって、長生きの秘訣かもしれません」

45周年の節目を間近に控え、新たな魅力で洗練されたハーモニーを奏でている4人。家族で育んできたハーモニーが、次の世代である2人に受け継がれ、時代が変わっても『サーカス』として繋がっていくのだ。変わらぬクオリティで進化を続けていく今後が楽しみだ。

 

聞き手 高橋牧子
編集長 山本英二