奥武蔵の山中
国宝のある
関東最古の山岳寺院
かつて栄華を誇った山岳寺院
慈光寺は埼玉県比企郡ときがわ町にある天台宗の寺院で、関東一円にある観音霊場、坂東三十三箇所の第9番札所でもある。伝承によれば、天武天皇2年(673年)、興福寺の僧慈訓が千手観音を安置し開山とされたという。その後、源頼朝などの帰依を得て、鎌倉時代に全盛期を迎え、壮大な寺院群を誇った。国宝の経典、法華経一品経・阿弥陀経・般若心経 33巻(東京国立博物館寄託)は、この時代の作品だ。戦国時代は僧兵を傭し、近隣の城主との抗争に明け暮れたという。その後、太田道灌らによって焼き討ちにあい、栄華を誇った寺院も衰運をたどることになる。慈光寺は、かつてこの地方の政治・経済・文化の中心であり、その伝統や技術が、ときがわ町の建具や小川町の手漉き和紙、狭山茶など、現代にも伝承されている。
ここへの参詣は、JR八高線明覚駅から乗合タクシー(要予約 049・292・8181越生タクシー)の利用が便利だ。途中の道程で先ず出会うのが慈光寺山門跡に立つ板碑(いたび)群。2mを越す5基の大型板碑を含み大小の板碑が林立する風景は不思議な感覚だ。ここから、現在の山門までかなりの距離があるので、往時の規模の大きさを伺い知ることができる。
慈光寺は境内全体が、自然と一体になっていて、とて清々しい空気が流れている。各建造物は距離が離れているので、ハイキングする心づもりで訪れるとよいだろう。