スペシャルインタビュー 原田 龍二 さん

爽やかな色気と端正な顔立ちとは裏腹に、どこか天然キャラで親しみやすさを感じる原田龍二さん。物腰の柔らかさと好感度から、最近はワイドショーのMCやバラエティ番組に引っ張りだこだ。最新主演映画『ハオト』で元海軍兵士というシリアスな役に挑んだ彼に、映画の話題を等身大で語って頂いた。

シリアスなテーマをファンタジーで包み込んだ映画
想像を膨らませ余韻を愉しんでほしい

人気時代劇『水戸黄門』の助さん役を好演

19歳の時、渋谷の街でスカウトされたのがきっかけで芸能界入りをした原田龍二さん。当時、芸能の仕事は特に意識していなかったものの、ドラマ「キライじゃないぜ」の初出演を機に、本格的に俳優としての道を進むことになる。
「デビュー10年目に、『水戸黄門』の5代目助さん役を演じる機会に恵まれました。黄門様役の里見浩太郎さんは、時代劇の主役を長年されてきた方でしたので、彼の所作、馬の乗り方から立ち回りの技術まで、間近で見て学ぶ事が出来ました。全てがお手本で、芸能界の大先輩であり師匠のような存在です。里見さんは過去に助さん役も演じられたので、直接ご本人から『原田君なりの助さんをやりなさい』、とアドバイスを受けました。この一言があり、里見さんを真似るのではなく、自分なりの助さんを演じ切れたと思っています。シリーズでの7年間、里見さんの側に居られた事は幸運で、指針となる言葉を沢山頂きました。俳優として、影響を受けた人物だと言えますね」

人生観を変えた『世界ウルルン滞在記

彼の魅力を引き立たせる代表番組と言えば、世界各地でホームステイをするドキュメンタリー『世界ウルルン滞在記』だ。スリランカ・モンゴル・ラオスなどの未開の地に、身一つで飛び込む体当たりロケは、観る人に大きな反響と感動を与えた。
「どの旅の交流にも感動が生まれましたが、一つを挙げるとしたらモンゴルでの経験です。初めて行く場所で初めて会う現地の人々なのに、彼らと一緒に居るとなぜか懐かしい感覚でした。日本人と同じモンゴロイドで顔が似ている事もありますが、前世で僕はここに居たのでは…、と思える程心地良かったのです。その後、モンゴルへは再々訪しています!僕がこの地へ訪れるのは、大いなる魂に導かれている…、そんなスピリチュアルな感覚にさえなる瞬間を幾度も体験しました。彼らと一緒に川で漁をし、山で木の実を採り、馬に乗って狩りをするのですが、その時目にした風景もどこか懐かしく、当然初めてのはずの風習や食生活も自然に思えたのです。言葉も通じない国の民族と暮らす度、大自然の中でシンプルに生きる大切さに触れ、自分がどんどん変わっていくのが判りました。人生観が変わりましたね」

温泉をこよなく愛する

近年では温泉をテーマにした旅番組の出演も多く、これまで日本全国400か所近くの温泉に出会い、数々の秘湯を紹介している。究極の秘湯を目指す『一湯入魂』(BS)は、地元の方オススメの野趣あふれる露天風呂を巡ったり、辿り着くまでに過酷な路に挑むなど、自ら「温泉俳優」を名乗る彼ならではの内容となった。八丈島の温泉大使にも任命され、今年4月からは絶景温泉を求めて冒険の旅に出る番組『湯ったり温泉バラエティ原田龍二の日本全国!湯一無二』(TOKYO MX)に出演中だ。
「温泉だけがイイという場所は沢山あるのですが、温泉だけが良くても心を掻き立てられなく印象に残らないのです。秋田の乳頭温泉郷に混浴露天風呂の『鶴の湯』というお宿があるのですが、そこは敷地に入った瞬間にタイムスリップしたようで、人間の郷愁をくすぐる雰囲気が漂います。勿論、お料理も素晴らしく全てが満足の内容で印象深いですね。皆さんにご紹介したい温泉の一つです」

最新主演映画
戦後80周年平和祈念『ハオト』

2005年に下北沢の本多劇場で初上演をした創作舞台『ハオト』。太平洋戦争末期の東京郊外にある精神病院を舞台に、外界の狂気を問うテーマをシリアスだけでなくユーモアとファンタジー要素も織り交ぜて描き、鑑賞した観客から絶賛された。満を持して映画化され、世界的にも軍事的緊張が高まる戦後80年を迎えるこの夏、いよいよ劇場公開となる。
「戦争や軍を批判し精神病扱いされる元海軍兵を演じていますが、特攻で出兵する弟との今生の別れのシーンがこの映画を際立たせるスパイスになっています。あのシーンでは水越家の二人を描いていますが、日本中多くの場所であれと同じ場面があったはずです。多くの方に当てはまるのではないでしょうか。
作品中の役者の演技をより効果的・魅力的にしてくれたのが、ロケ地である、長野県佐久市の旧志賀小学校です。旧校舎ならではの雰囲気や中庭の木々、見上げた空など、全て佐久の自然をそのまま切り取って撮影しています。物語と並行して相乗的に映っている画も見所と言えるでしょう。メッセージと娯楽性、ファンタジー要素も含んだ独自の世界観をぜひお楽しみください」
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将来の夢を伺ったところ、『木枯らし紋次郎』や『子連れ狼』など、役者として土臭いダークヒーローに挑戦することだそう。その出で立ちと口調から、歳を重ねてなお円熟味が増した姿が容易に想像できました。
聞き手 高橋牧子
撮影 岡田充

 

Profile 原田龍二(はらだ りゅうじ)1970年10月26日生まれ 東京都足立区出身
1992年ドラマ「キライじゃないぜ」で俳優デビュー。95年公開の『日本一短い「母」への手紙』で第19回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。2003年「水戸黄門」5代目助さん役や、「相棒」シリーズの陣川公平役で人気を博す。ドキュメンタリー番組「世界ウルルン滞在記」での世界各国の旅経験を始め、現在は日本全国の絶景秘湯を巡る温泉をテーマにした旅番組に出演。映画や舞台のほか、司会業やYouTuberとして活躍の場を広げている。