平浩二さん

「♪バスを~待つあいだに~」…、誰もが口ずさめる名曲『バス・ストップ』。歌謡曲全盛期の昭和40年代、その繊細なメロディーにマッチしたファルセットのきいた甘い歌声で多くのファンを魅了した平浩二さん。所沢・入間地域には今もかわらない熱い支援者が多く、とても馴染み深い地だと話す。ご自宅でご家族に囲まれる中、アットホームな雰囲気の中で行われたインタビューだ。
声は健康のバロメーター
健康の秘訣は思いっきり高いキーで歌うこと

Profile 平浩二(たいらこうじ)1949年生まれ 長崎県出身
 1967年に歌手を目指し上京、2年後にレコードデビューを果たす。1972年に発表された「バス・ストップ」がオリコンチャートで超ロングヒット。その10年後にも同曲が明治チョコレートのCMに採用され再発売されるなど、CMソングとしてもお馴染みだ。2015年、故郷佐世保市の初代観光名誉大使に任命される。今年3月には自身作詞作曲の新曲が発売されるなど、現在もなお音楽活動を中心に日々奔走中。
――橋幸夫さんに憧れ歌手を夢見る
地元の工業高校を卒業後、大阪の大手電機メーカーでサラリーマン生活を始めたのもつかの間、学生時代から青春歌謡に魅せられて育った彼は歌手への夢が捨てきれず、その年の秋に歌手を目指して上京することになる。
「父は僕が6人兄弟の長男にもかかわらず、歌手への夢に一肌脱いでくれるような人でした。父の後押しがあったからこそこの道が開けたのだと、今でも感謝しています。父の伝手で、歌の先生に弟子入りし上京したのが芸能界に入る第一歩でした。その後、テイチクレコードの先生の下でレッスンを受けレコード発売はさせて頂いたものの、プロダクションには所属してなかったためとても苦労しました。レコードデビューをしているにも関わらず、銀座や新宿のクラブで深夜から朝方までギターの弾き語りをする…、そんな毎日が続きました。その頃、ある有名なプロデューサーの方とプロダクションの社長さんが、僕の噂を駆けつけ、歌を聴くためにわざわざクラブまで来て下さったのです。この先生方との出合いがその後の人生を大きく変え、本格的なデビューになったのです」
――緻密に計算されて世に出た「バス・ストップ」
「僕は20歳前から、ひっくり返るような高い裏声で歌っていました。この声を聴いたプロデューサーさんが、この声の特徴を掴んだ曲が出来ないものか…、と長い間模索していたのです。『バス・ストップ』はそんな中、タイトルも歌詞も無くメロディー先行で僕の下へ飛び込んできたのです。まるでスクリーンミュージックの様な綺麗な旋律で、ソフィアローレン主演の『ひまわり』を彷彿させる様でした。歌詞はこの曲に上手くマッチするまで繰り返し何度も選別されました。当時、まだ横文字のタイトルがない時代、1950年代のマリリンモンローの主演映画『バス停留所』という映画のタイトルがヒントになり、この曲に『バス・ストップ』というタイトルが付けられたようです。時代を先取りした斬新さと僕の歌声とが上手く噛合って世に出され、原石だった僕を磨いてくれた最高の曲です。
 NET(現テレビ朝日)のベスト30歌謡曲で『バス・ストップ』がテレビ放送され、この曲が世に広がるきっかけになりました。ヒット曲が生まれたことで、長崎の両親を東京によびよせ一緒に住むことが叶い、父親にも恩返しができたと思っています」

――故郷「佐世保観光名誉大使」に!
平さん自身が作詞作曲の「愛・佐世保」という曲が発売されたのを機に、佐世保市身体障害者50周年式典にボランティアで出演。2015年、故郷でのステージ上で佐世保市長から初代「佐世保観光名誉大使」の委嘱を受け、ボランティア活動も精力的に行っている。地元でチャリティコンサートをする際には、市や出身校に寄贈しているそうだ。
「去年2月に故郷に感謝の気持ちを込めて、生まれ育った美しい風景を想い『九十九島』という曲も同時に発表しました。ボランティア活動も含め、このように故郷で活動ができることはとても恵まれていると感じますし歌手冥利に尽きます」

――平浩二の世界をこの春発表
 3月に発売される両A面のCDは、奥様が作詞・作曲した「最終便」という曲も入っており、いわば夫婦二人三脚の合作となっている。
「僕は昔からずーっと女心の切なさを詞に託して歌ってきました。今度も、ファンの皆様が待ち望んでいた作品になっています。収録曲の『バス・ストップ』は今回、再レコーディングしたもので、もちろん当時のキーのままです。高音が出せるのが僕の健康のバロメーターになっています。いつまでこの原調の高音で歌えるのか楽しみです。最近はこの声を維持するために、声帯を休ませたり緑茶でうがいしたりするのが日課になっています」

――熟年ばんざい読書の皆様へ
 「僕は病院が大好きなんです。7、8年前からご近所のお医者さんと仲良くなりプライベートでも親しくさせて頂いています。だからちょっと具合が悪いと、すぐ病院へ行っています。内科でも歯科でも主治医を見つけたら、まめに病院に通うのが僕のスタンス。やはりお医者さんと会話をしてアドバイスを受けるのが一番です。安心しますし、あれこれ自分で考えるより気持ちが楽ですよ。だから病院へは楽しく行っています。『病は気から』と言いますが、身近に信頼がおけるお医者さんがいる事で、心に余裕を持てるはずです」

来年でデビュー50周年。記念アルバムやイベントの構想を真剣な表情で語る姿と、目を細めて愛犬に話しかける姿のギャップに思わず心が和みました。その歌声だけでなく、少年のような純粋さとやさしさが、根強い人気の秘密なのだと納得させられたインタビューでした。

2018年2月
(聞き手:高橋牧子 編集長:山本英二)