伊藤咲子さん

 元気いっぱいの笑顔と伸びのある爽やかな歌声で「だれの~ために~咲いたの~」と歌い、「サッコ」の愛称で人気を集めた伊藤咲子さん。1970年代のアイドル全盛期を代表するバリバリのアイドルだ。時を経て、当時の愛くるしさと大人の女性の魅力を兼ねそなえた彼女が、作曲家・三木たかしさんの未発表曲を新曲として歌う。そんな彼女に現況と意気込みを伺った。
人間って何歳がピークなんだろう、
それは死ぬ瞬間だと思うんです。
Profile 伊藤 咲子(いとう さきこ)
1958年4月生まれ 東京都目黒区出身 日本テレビのオーディション番組「スター誕生」での優勝を機に16歳で芸能界へ。デビュー曲「ひまわり娘」が大ヒットし日本歌謡大賞など数々の新人賞に輝く。後、「木枯しの二人」「乙女のワルツ」「きみ可愛いね」など、ヒット曲続出でNHK紅白歌合戦に出場。現在は、コンサート活動で全国を奔走中。持ち前の歌唱力で舞台ミュージカルにも挑戦している。
――聖歌隊で独唱をする可憐な少女が、アイドルに大変身
元気と笑顔がトレードマーク、デビュー曲「ひまわり娘」の大ヒットで一躍トップアイドルの仲間入りをした伊藤咲子さん。彼女の廻りにはいつも人が集まり、身内や学友の前で歌うことが幼い頃からの日課だった。
「スター誕生から今度デビューした森昌子ちゃんって、私達と同い年なんだよ。伊藤ちゃん、こんなに歌が上手いんだからきっと大丈夫! オーディション受けてみなよ」
そんな学友の後押し通り、スター誕生のオーディションに15歳で合格し、その後はトントン拍子。アイドル街道を走って行った。
「スタ誕の仲間には、森昌子ちゃん・山口百恵ちゃん・桜田淳子ちゃん・岩崎宏美ちゃんなど沢山いるのですが、ファミリーみたいに仲良しなんです。もちろん先輩後輩はありますが、同い年という括りで結ばれてます。地方公録に行くのがすごく楽しみで、スケジュール表を見てワクワクして。まるで修学旅行の様に、今日は誰の部屋に集まる~?っていうノリでしたね。仕事が忙しく学校に行けなかった分、楽屋で女子高生気分を味わってました」
――長い闘病生活を乗り越えて
今、目の前にいる彼女はとても溌剌として元気そのものなのだが、実は30代前半から9年間もの間、婦人病との戦いを強いられていた。最初は人間ドックで、小さな筋腫が見つかったにすぎなかった。そのまま放置しておいたのが後の長い苦しみの原因となった。
――涙あり笑いありの「同窓会コンサート」
健康を取り戻した現在は、コンサート活動で日本全国を飛び回っている。
「毎年、100本近く全国各地で『同窓会コンサート』を行ってます。2月の神戸公演をはじめ、3月の沖縄公演、4月には関東近郊でも開催されます。西城秀樹さん・尾藤イサオさん・小川知子さん・辺見マリさん・今陽子さんなど…、1960年・70年代のヒットパレードです。お客様もリアルタイムにその世代の歌を聴いていた方々なので、会場全体で大合唱。パワー溢れる参加型のコンサートです。あべ静江さんの司会で、西城秀樹さんの『Y・M・C・A』を皆さんで歌って踊って…という感じです。『病気療養中なのですが力強い歌で勇気を頂きました』『親の介護中ですが頑張ろうと元気がでました』というお客様の声が、私自身の力になってます」
――新曲『プルメリアの涙』に思いを込めて
伊藤咲子さんは、3作目の「木枯しの二人」から、三木たかしさんの曲が数多く縁深い。
「三木先生には、もっともっと恩返しがしたかったのですが、叶わなく落ち込んだ時期もありました。先生から頂いた曲を大切に歌い続ける事が恩返しだと思っていたので、先生の新しい曲が、今歌える話が舞い込んでくるなんて夢のようです。先生の未発表曲が歌える…、こんな光栄な事はありません。語りかけるような爽やかなイメージの曲で、絶唱型の今までとは違う新しい私の世界を聴い下さい」
また、もう一方のA面曲「たそがれに愛をこめて」は、「想い出のセンチメンタルシティイ」のB面に収録された阿久悠/三木たかしコンビの名曲だ。卒業をテーマにした作品で、八千代少年少女合唱団による合唱バージョンも収録されている。改めて日の目を見ることになったこの曲が、合唱曲として次の世代にも受け継がれていってほしいと語っていた。
――笑顔でいると幸せが寄ってくる
「一度しかない人生、笑って過ごすもブスーッとして過ごすも同じ時間です。私は、病気の時も離婚の時も、今振り返ると基本は笑顔でいた気がします。だから今の幸せが寄ってきたのだと信じます。辛い時も鏡を見て口角が下がっていたらキュッと上げてニコッとしてみて下さい! 幸せが舞い込んでくるように笑ってみて下さい! 全て気の持ちようですから」

終始笑顔で気持ちの良い受け答えが魅力的な伊藤咲子さん。来たる4月27日、ウェスタ川越で開催される「同窓会コンサート」に期待が高まる。

2016年2月
(聞き手:高橋牧子 編集長:山本英二)