CASE2 生命保険金は受取人が独占できる!?

先日、父が亡くなり、兄と私と妹が相続人となりました。父の遺産は1500万円の預貯金ですが、兄は生命保険金の受取人になっており、500万円を受け取っています。兄は500万円の生命保険金をもらったうえに、1500万円の3分の1は自分の相続分だと言っていますが、納得できません。私は生命保険金も加えて、2000万円の3分の1が兄の相続分だと思うのですが、そうではないのでしょうか? (所沢市 Yさん 男性55歳)

生命保険金は受取人固有の財産
遺産分割の対象となる「相続財産」ではない

生命保険金は、受取人固有の財産となります。ですから、お兄様が全てもらう権利がありますので、お兄様の言い分は間違ってはいません。もっとも、保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生じる不公平が著しい場合、たとえば、生命保険金の額が遺産総額と比較しても相当多額の場合には、特別受益に準じて持戻し(遺産に加算すること)の対象となる場合もありますので、注意が必要です。
ややこしいのですが、民法上の遺産分割の対象となる「相続財産」と相続税が課税される対象となる「相続財産」とは異なります。生命保険金はその典型例で、今回のケースのように特定の相続人を受取人に指定した場合だけでなく、受取人が単に「相続人」と指定されていた場合でも、民法上の遺産分割の対象となる「相続財産」ではありませんが、相続税の課税対象となります。
これとは逆に民法上の遺産分割の対象となる「相続財産」であっても、相続税課税の対象とならないものもあります。例えば、被相続人から金銭等の生前贈与を受けた相続人がいる場合、民法上は、いつ生前贈与を受けたとしても、「特別受益」として持戻しの対象となり、「相続財産」に加算されます(「みなし相続財産」といいます)が、相続税課税の対象となるのは、相続開始前3年以内の生前贈与に限られます。

回答者 弁護士 加藤 剛毅 さん

弁護士・中小企業診断士・元さいたま家庭裁判所家事調停官 2001年早稲田大学法学部卒業。2018年武蔵野経営法律事務所設立。著書「トラブル事案にまなぶ「泥沼」相続争い 解決・予防の手引」

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