スペシャルインタビュー 桑江 知子さん

都会的で洗練されたイメージで「あーぁ♪私のハートは~ストップモーション」とクールに歌う桑江知子さん。インパクトあるフレーズでCMでお馴染みのこの曲は、熟年世代の皆さんならきっと口ずさめるに違いない。バラードからラテン、ジャズまで幅広く歌いこなす実力派シンガーで、故郷の琉球民謡も取り入れるなど、独自の世界観を表現している彼女が現況を交えて語ってくれた。

怖がらずに正しく恐れて、対策を
しっかりとって行動をしましょう!

高校卒業3日後夢を追い上京

幼い頃から歌うことが大好きだった少女が、歌手になりたいという夢を叶えるために福岡から上京したのは、高校卒業式を終えたわずか3日後。段ボール2箱分の荷物だけを持ち、夢を膨らませてスタートを切った。
「小学校の頃から、音楽の授業ともなると得意になって歌っていました。漠然と歌手になる事を目指していて、叔母の後押しもあり中学2年から東京音楽学院九州校に通い始めたのです。歌やダンスのレッスンに本格的打ち込んでいた高校3年の時、渡辺プロの選抜オーディションを東京で受けるチャンスが訪れました。そこで渡辺プロのプロデューサーの目に留まった事がきっかけで、上京を決意しました。新人として寮生活が始まり3月からレッスンを始動させたわずか10カ月後の1月には早くもデビュー。トントン拍子でした。既に化粧品会社の新商品のキャンペーンソングを歌う事が決まっていて、そこからは、『レールの上を走った』という感じですね」

笑顔を見せないアイドル

『キャンデーズ』が解散した翌年、渡辺プロの次の戦略で、満を持して送り込まれた大型新人が『桑江知子』だった。化粧品メーカーのCMソングから多くのヒット曲が生まれたこの時代、新ブランドのキャッチコピーとして用意されていた「ストップモーション」という言葉に、作詞・竜真知子、作曲・都倉俊一の黄金コンビが手掛けた曲が彼女が歌った『私のハートはストップモーション』だ。イントロからいきなりの鮮烈なメロディが話題となり、テレビやラジオでスポットライトを浴び爆発的なヒットとなった。その年の日本レコード大賞では、松原のぶえや竹内まりやを抑え、最優秀新人賞を受賞している。
「実はバラード歌手を目指していましたので、軽快なこの曲はしっくりこなく戸惑いがありました。決められた衣装やメイク、笑顔を見せずにクールに歌う、という事務所が求めるイメージに、本来の自分とは違う…という違和感を拭えなかったですね。新人ながら当時のプロデューサーさんに食ってかかった、という生意気なエピソードがありますね(笑)」

故郷の琉球民謡に目覚める

「ライブ活動を続ける上で色んなジャンル選曲していく中、母や祖母から『沖縄には良い歌が沢山あるのになぜ歌わないの?』と言われたのが、沖縄の音楽に目覚めたきっかけでした。三線を弾きながら男性の高いキーで歌う琉球民謡に、故郷の血が騒いだとでもいいましょうか…。自分のルーツである故郷の民謡はやはりしっくりきたのです。琉球民謡を歌うようになってからは、音域が広がりファルセットでも歌えるようになったので、表現にも幅が出ました。日比谷野外音楽堂で開催される琉球フェステバルの出演や、沖縄の観光振興など、活動の場も広がりました。ライブでは三線で琉球民謡を披露しています。沖縄の音楽、琉球民謡は今後もライブを始め様々な会場で歌い続けたいですね」

思い出を歌にのせて届ける
夢コンサート

「最近欠かせないのが早朝の散歩。約10キロ1万歩を1時間半かけて歩きます。遊歩道を歩きながら、草花や鳥のさえずりなど四季の移り変わりを愉しんでいます。日焼けをし、ふくらはぎに筋肉が付きましたね。ふくらはぎは第2の心臓!たくましくなったおかげか、久しぶりのステージでも声がばっちり出ていますよ。
最近になってようやく有席でライブが出来るようになりました。お休みしていた『夢コンサート』も、全国各地での活動を再開します。『夢コン』は私達が小・中学校で聴いていた曲が中心なので、楽屋でも皆で歌ったり踊ったりして盛り上がります。歌って不思議なことに、その当時の記憶そのまま甦えさせてくれるので、観客の皆様も青春時代を思い出して素敵な時間を過ごされていますよ。最近は出演者同士でのコラボなど、新しい試みもしています。また、12月にはクリスマスディナーショーも開催します。普段のライブとは違った内容で、ジャズやボサノバ、カバー曲からクリスマスソングまでお届けします。ギターやバイオリン、ピアノの生演奏と共に、お洒落で優雅に心豊かな時間を過ごして頂ければ嬉しいですね」

「アイドルに笑顔」はつき物の時代、無口で笑わないクールビューティのイメージで歌っていた彼女。自然体で飾らずに語ってくれる様子から、本来の彼女の素顔を垣間見るとともに、素敵な歳の重ね方をしているのが伝わってきた。

聞き手 高橋牧子
編集長 山本英二

Profile 桑江 知子 (くわえ ともこ) 1961年1月18日生まれ 沖縄県中頭郡出身
1979年『私のハートはストップモーション』で歌手デビュー。化粧品のCMソングとして脚光を浴び、同年の日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞するなど、その年の新人賞を独占。2001年琉球民謡コンクール新人賞、2005年琉球民謡コンクールの優秀賞を受賞。沖縄民謡を取り入れた楽曲を発表し、毎年開催される「琉球フェステバル」などに出演。ラジオパーソナリティ、DJとしての活躍の場を広げると共に、近年は「夢スター歌謡祭」の出演で国各地でコンサート活動中。