和服が似合う美貌と清楚な色っぽさが魅力の山口いづみさん。人気時代劇シリーズ「大江戸捜査網」や「水戸黄門」に出演 し、時代劇には欠かせない存在の美人女優だ。当時を振り返り、時代劇ならではの撮影秘話や現在のライフスタイルの一部ともなっているライブ活動のご様子を語って頂いた。
『人は財産!』自分に関わってくれた人を大切に生きていきたい
漫画「あんみつ姫」に憧れていた少女時代
女優デビューから瞬く間もなく歌手デビュー
立ち回りが出来る 時代劇に欠かせない女優
「『大江戸捜査網』では隠密同心役でしたので、立ち回りのシーンは年中。私は運動が苦手の運動嫌いですので、立ち回りの特訓は本当に辛かったです。毎日、剣友会の方達と5時間位ぶっ続けで練習をするのですが、強烈な筋肉痛で転んでも立ち上がれない程でした。いざ撮影に入ると、忍者の格好をして、足袋で屋根の上を走らされるのです。足を滑らせてドーッと落ちてしまい、軒先ギリギリでようやく止まってくれた(笑)など、怖い思いを何度もしました。立ち回りの最中、相手方の鎖骨に私の手がバシッと入り、軟らかいはずの鎖骨が無事で私の手の方が折れてしまい、ギブスをした右手を袖の中に隠して左手で立ち回りをして撮影を続けた事もありました。
『大江戸捜査網』のレギュラーを2年務めた後『水戸黄門』に移行しました。助さん役の里見浩太朗さんとは恋人役から妻役まで、本当に長いお付き合いでした。黄門様御一行として一緒に旅をさせて頂き、俳優座の大御所、ご隠居様役の東野英治郎さんを始め、皆様とはファミリーのように行動していましたね。今では考えられませんが、衣装を着てカツラを付けたまま移動も食事もし、朝から晩まであの格好でした。ロケシーンとなると、海は琵琶湖、川は保津川、山道は亀岡の田舎での撮影です。厳しいロケ続きでしたが辛かった思い出は無く、回りの方に助けて頂きながらのとても温かな現場でした」
観客と共に楽しむステージ
結婚・育児を経て本格的な復帰後、現在力を注いでいるのがライブ活動。ステージでクロアチアの国民的歌手の歌を披露したのを機に、動画サイトで火が付いた。国営放送やネットでも『クロアチアで最も有名な日本人歌手』と紹介され、国境を越え欧州まで普及しファンの輪が広がった。
「ライブではアイドル時代には、好きでも歌えなかったジャズや海外ポップスを様々なバリエーションで歌っています。会場にはデビュー当時から応援して下さるファンの方も多く、喜んで頂けるのがとても有り難いですね。ステージでは皆様との距離も近く交流が出来る楽しさもあり、定期的に行って15年になります。年3、4回のこの活動が今はライフワークになっています。
現在、ライブ活動の傍ら、『キャンドル作り』の虜になっています。『いづみキャンドル』としての販売やワークショップの依頼も頂いておりますので、この先の楽しみとして展開して
いけたら嬉しいですね」
人との御縁で今日がある
「私と同じ世代の皆さんがそうだと思うのですが、あっという間に年齢を重ねていて気付いたらこの歳になっていた、と感じているのではないでしょうか…。私は一時期、『老』と向き合うのが恐怖で、心が付いていかない時期がありました。でも今は、毎日を大切に過ごしたい気持ちが強くなり、『歳を重ねるって素敵な事』と思えるようになりました。自分に関わっている人を大切に、そして今から巡り会う人ともそういう関係を繋げていけたらいいな、と。そういう人達がこれから先、支え合える関係になっていくと思います。
今年10月には、日本歌手協会主催の「歌謡祭」に出演し、昭和の往年のスターと一緒のステージで自身のヒット曲『緑の季節』を歌う。『私でいいのかしら』と謙虚な言葉を口にしながらも、「せっかく頂いた御縁なので楽しんで歌わせて頂きたい」と、彼女らしく前向きな姿勢を覗かせた。私自身もうなずける言葉の数々から、素敵な歳の重ね方をしているのだと感じた。
聞き手 高橋牧子
編集長 山本英二
Profile
Profile 山口 いづみ(やまぐち いづみ)1954年10月3日生まれ 東京都渋谷区出身
1972年「続・大奥の女たち」で芸能界デビュー、同年「緑の季節」でアイドル歌手としても人気を博す。後、「雑居時代」「大江戸捜査網」「水戸黄門」など、多数のTVドラマに出演し、女優として活躍。結婚・子育て時期の休業を経て本格的に復帰再開後、ライブで歌ったクロアチアの曲がYouTubeで評判となり、クロアチアで人気No.1の日本人歌手となる。現在も舞台や映画、ライブ活動など幅広く活動中。