スペシャルインタビュー 伍代 夏子 さん

数々の名曲を艶やかに歌い上げ、人気・実力ともに演歌界を代表する伍代夏子さん。日本女性ならではの凛とした美しさだけにはとどまらない、知性と人間性溢れる素顔の魅力に迫った。

一日の終わりに鏡の前で自分の笑顔を確認すると明るく前向きになれます!

歌手になる運命と信じていた少女時代

都会の華やかさと代々木公園の緑豊かな自然が調和された環境で育った伍代夏子さん。幼い頃から着物が大好きで、夏祭りに浴衣を着られることがとても楽しみ、街中で着物姿の女性を見かけると、ウットリと見とれる事も度々だったと言う。小学校時代、自分では引っ込み思案だと思っているにもかかわらず、学級委員などはいつも任せられるタイプで、いじめっこの間には割って入らずにはいられない、正義感の強い少女だった。
「幼い頃から、『大きくなったら歌手になることが決まっている』という運命を不思議と信じ込んでいました。歌手以外の職業に就く自分の姿は、全く想像ができなかったのです。物心ついて、何もしないでそうそう簡単に歌手になれるわけではないのだ…、と気付いた時は、むしろびっくりして不思議な感覚だったくらいなのです。その後、高校時代にモデル事務所にスカウトされたのがきっかけで、ボイストレーニングを受ける機会に恵まれました。レコード会社のレッスン生となり、そこから本格的に歌の勉強が始まったのです」

下積み時代を経て、『伍代夏子』誕生へ

人気と実力を兼ね備えた彼女だが、ヒットするまでには下積みを経験している。初デビュー後4カ月で事務所が倒産、所属事務所がないまま歌のレッスンだけを続けていた時代もあった。3度の改名を繰り返す中で、漸く念願の着物を着て演歌を歌うスタイルに辿り着いたのだった。
「『市川昭介先生』の歌の指導では、上手く歌いこなすだけではなく、歌にどんなメッセージが込められていて、聞く人に何を伝えたいのか…、歌詞を消化し言葉の意味を伝える歌い方を教わりました。幾度ものレッスンを繰り返し、『戻り川』に挑み、ヒットに繋がったのです。市川先生の教えが、今の『伍代夏子』を築いたと言っても過言でないと思います。
紅白歌合戦に初出場したステージでは、歌っている記憶は殆どありません。『忍ぶ雨』を歌い終えマイクを返した瞬間、体中が震えて涙がせきを切ったように溢れてきました。自宅に戻り、両親と一緒にビデオで自分の出番を何度も繰り返し観た思い出があります。堂々と歌い上げている姿は、まるで自分ではないかの様に映っていましたね。頭が真っ白な状態でもいつも通りにできるのは、日頃の稽古と場数が物を言うのだと感じました」
今後は自身が培ってきた経験を基に、年月をかけて知りえた事や自分が若い時に知りたかった事を後世に繋げていきたいと語っている。

福祉活動に対する深い思い

歌の世界だけには留まらず、彼女は社会貢献や国際交流などの福祉活動に力を注ぎ、被災地支援では、炊き出しや救援物資、慰問などを続けている。
「デビューして間もなく、地方のステージで極度の緊張をしている私の前に、叔父さんだと名乗る方や初めて会う遠い親戚の方々が応援に来て下さった事がありました。皆さんに力を頂き、心がスーッと軽くなった記憶があります。『人類はみな兄弟』、ルーツを辿れば人間はどこかで繋がっているのだと思うと、助け合うのは当然だと感じます。東日本大震災で南相馬の避難所を訪れた時も、やはり親戚が何人かいましたし…。慰問など喜ばれて嬉しいのは当然ですが、何か大それた事をしている感覚ではないですね。足手まといにならない様、行っても良い頃合いを見極めて、自分にできる範囲のお手伝いをする事がライフワークになっています」
現在は、全国に一万人程度の有資格者がいる『ペット災害危機管理士』の資格を取って、保護犬(猫)のレスキュー活動を始めています。有事の避難所の設営や運営などを踏まえ、『災害時のペット同室避難のすすめ』を自治体や避難所を通して広げていきたいですね」

発声障害を乗り越えて

4年前に、喉のジストニアと診断をされた事を公表している彼女だが、実のところはっきりとした原因や治療法さえわからない病気なのだと言う。
「ジストニアという病気で片づけられがちなのですが、私の場合は機能性発声障害、局所性ジストニアと自己分析しています。緊張やストレスによって何かのスイッチが入ってしまうのでしょうか…、発生が困難な症状が強く出る時とそうでない時の波が凄くあります。歌う時よりも普段の会話の方がきつかったりもしますね。自分の症状に関しては凄く勉強をしましたが、完全には戻らない病なので、完治を目指すのではなく、立ち向かって共存していく覚悟が大切だと思っています。
皆様も年齢を重ねていくと、何かしら困難に直面する事があるのではないでしょうか?
そんな時にオススメしたいのは、一日の終わりに『笑ってから寝る』習慣です。大事なのは、その笑顔を鏡で見て自分の目で確認する事!脳が『幸せなのだ』と錯覚して、元気になれるのです。健康の秘訣ですね」

(聞き手 高橋牧子  撮影 岡田充)

Profile 伍代 夏子(ごだい なつこ)1961年12月18日生まれ 東京都渋谷区出身
1982年に歌手デビュー、後3度の改名を経て1987年、『戻り川』で再デビュー。有線放送大賞最優秀新人賞など、88年度の多くの新人賞を受賞。1990年、『忍ぶ雨』でNHK紅白歌合戦へ初出場をし、以来、通算22回の出場を果たす。文化・国際交流や社会福祉活動に貢献し、その功績が認められ2015年、外務大臣賞を受賞。音楽だけにとどまらず、幅広い活動で異彩を発揮している。